トラックのチェーンの巻き方(付け方)はご存知でしょうか?
実はドライバーでも経験が浅かったり、長い人でもつけ方を知らない人って意外に多いんですよね。
ベテランでもたまに知らない奴いるから困っちまうよな!
トラ男!その人はベテランじゃないわ!
ちなみに今回使用する車両は大型車両ですが、
2tから10tまで、あらゆる重量のトラックの付け方は、ほぼ一緒なので全てカバーできるんじゃないかと思います。
まず装着するタイヤの「場所」はどこ?
原則としてチェーンを付ける位置は「駆動軸」です。
- 2軸のトラックなら後ろのタイヤ
- 3軸のトラックなら後ろから2番目
- 4軸のトラックも後ろから2番目
外見の特徴から見分けるのは困難なため、トラック備え付けの説明書を見るか、車検証を用意してメーカーに問い合わせてみましょう。
①チェーンの”ゆがみ”を直そう
こんな感じで広げて、
チェーンに”ゆがみ”や”ねじれ”がないか調べます。
ちなみにこの画像のチェーンだとゆがみはありませんが、ゆがみがどういうものかというと変に「よれたり、ねじれたり」していないかを見ます。
特に縦横が交差する「クロス」の部分はしっかりと見よう!
②エアサスを上まであげる
「エアサス」が装備されている車両なら、限界まで上げてしまいましょう。
後の作業のやりやすさがだいぶ変わってきます。
③チェーンの構造をよく見る
なぜ構造をよく見るかというと、「いつ」「どのような状況で」チェーンを付けることになるかは、わからないからです。
暗い場所で付けることになるかもしれません。
ちなみに私は吹雪の中、暗いローソンの駐車場でつけることになったこともあります。
ローソンさんありがとう…。
フックの留め方は装着を始める前に必ず記憶しよう!
最後にフックをかける時は、タイヤの裏側に手を回して付けることになります。
なので、目視で確認することは状況によって厳しいので、先に覚えておきましょう。
③-①輪の中に通す
③-②通したら回す
③-③1周させ金具を引ける位置まで持ってきたらスライドさせる
③-④完成
④タイヤにかぶせる
フックの留め方を記憶したら、1度外してこのようにしてタイヤにかぶせます。
この段階で均等にチェーンを引っ張り、内側もしっかりと伸ばしておきましょう。
気をつけたいポイントは、タイヤにかぶせる際「赤丸のフック部分」をタイヤに対して外側に向くように付けてください。
POINT この部分を「クロス」と呼びます
ここは確実に「外側」に向けてね!
タイヤは側面からの衝撃には弱いから最悪パンクしちゃうよ!
⑤外側だけフックをかける
被せたまま「外側」のフックだけかけてください。
ここで「内側」もかけようとする奴がたまにいるが、
結構難しいぜ!
「チェーンのコマ」が余っていますが、問題ありませんので「引っ張れるところ」まで引っ張りましょう。
※「コマが余っていい理由」は後述するから安心してくれ!
⑥トラックを前進or後退させる
内側のフックを引っ掛けるために、トラックを「外側のフックをかけた状態で」少し前に出します。
とにかくゆっくり進む
ここのポイントは、とにかく「ゆっくり」進ませてください。「デフロック」がついてる車両なら、空転を回避するためにONにしとくと吉です。
ゆっくり!とにかくゆっくりね!
⑦外側のフックを一度外し、内側のフックをかける
少し前に進ませたらこのような状態になります。
ぐちゃぐちゃだな!
「赤丸」で囲った部分に「内側のフック」が隠れています。
外側のフックを一度外してから、チェーンを引っ張りながら、内側→外側の順で装着してください。
⑧もう一度確認しチェーンを引っ張る
このようにたるんでいる状態だと危険なので、再びチェーンを引っ張りながら「コマ」が詰められるかよく確認しましょう。
⑨たるみが少ないことを確認したら最後の部品を装着
これくらいのたるみなら大丈夫です。
POINT 目安としては「ホイール」にチェーンがかからないくらいが理想です。
そしてチェーンの付属部品を付けて完成。
付属部品は等間隔で装着しよう!
⑩装着完了
作業終了です。
補足情報
※コマが余っていい理由
トラックは乗用車と違い、タイヤの「溝がかなり深い」ので新品と中古ではタイヤの大きさが違います。
なのでチェーンも大きめに作られていて、タイヤの摩耗具合でコマが余ったりします。
また余ったコマは、針金やゴムで固定しておきましょう。
装着してからしばらく走行した後に再びゆるみを点検して、締め直すと尚良いぜ!
チェーンをあらかじめ敷いて装着するのはどうか?
このように敷いてから装着する方法は、オススメできません。
今出てるほとんどのトラックは、2t車も含め「ダブル(後軸のタイヤが片側2本)」が多いです。
なので正確に敷いたとしても、かなりの確率で内側のタイヤが踏んでしまいます。
私も敷いて一生懸命頑張ってた時期もあったけど、結局片側ずつやるこのやり方が一番早いと思うわ!
木を踏ませ、タイヤを浮かせたほうが楽では?
その通りなんですが、今回は「いつ」「どんな状況で」「誰でも」できる付け方を想定して書かせてもらいました。
また、大型にもなるとタイヤを浮かせるための木は「そこそこの高さ」が必要なのと、「相応の重量」に耐えられるものではないといけないので、常に持ち歩くのは少し現実的じゃないかなと思います。
チェーンを付ける目安は?
チェーンを付けたほうがいい状況は、
「スリップした(あるいは空転した)」
「積雪した日の後日(深夜、明朝など)」
「交通量が少ない積雪地域を通る」
また、チェーンを装着していない状態での、雪道は充分気をつけましょう。
勾配のある場所や、坂の途中では絶対に停車しないように。
登ることも下がることもできずに、動けなくなるのはまだいいですが、無理して横滑りしてぶつける人が多いです。
何キロで走ればいい?
装着状態の時速は「~30Km」が理想とされています。
たまに50~60Kmで走っている奴いるが、本当に危ないぞ!切れて自分の泥除けが破損するくらいならいいが、切れた部品が飛んでしまうこともあるからな!
チェーン装着時にあると便利なアイテム
ゴム手袋は一つ持っておきたい
雪が降る日というのは基本的に寒いですよね。
なので軍手や普通の手袋で作業していると、手がかじかんでしまい、思うように装着できないことがあります。
あまり装着に慣れてない人や、時間がかかる人は一つは絶対に持っておきたいアイテムですね。
ちなみに私は手がかじかむ前に装着できる自信がありますが、手袋が濡れるのと、汚れてしまうのが嫌なので普通に持ってます(笑)
長靴はシューズ内の雪の入り込み防止
なるべく、高さがあるものが望ましいです。
チェーンを巻く必要があるほどの積雪時は、ローカットの作業靴だとシューズ内に雪がかなり入るので、相当冷たいです。
ヘッドライトは夜間装着の際に便利
チェーンって実は夜間に装着することが多いの知ってますか?
道路を走るトラックを見て頂ければわかりますが、多くの人は日中に働いてますよね。
例えばその日中に雪が降っても、夜に比べると気温も高いし、走行している車も多いので、大雪と呼べるレベルじゃなければ滅多に積もらないんです。(あくまで首都圏の話ですが…)
ただ、降り続けると夜に積もります。
だから多くの人は次の日の明朝に備えて夜のうちに…だったり、当日の運行を終えてから付ける、という事が多いんですよね。
まとめ
- チェーンのゆがみを直す
- エアサスを上まで上げる
- チェーンの構造をよく見る
- タイヤにかぶせる
- 外側のフックだけかける
- トラック前進or後退させる
- 外側のフックを一度外し、内側のフックをかける
- チェーンを引っ張りコマを詰める
- 付属部品を等間隔に装着
- 作業完了
乗用車の場合は、いちいち前に出す必要もなく、そのままかけられますが、トラックで同じことをやろうと思うと難しいです。
また、運送会社に勤務している人や現役で働いているドライバーでも、「木を噛ませないと上手につけられない」という人も多かったので今回の記事を作りました。
コメント
丁寧でわかりやすかったです
ありがとうございました
ありがとうございます。そういっていただけると本当にうれしいです。
一番最初の装着する場所についてですが、
4軸車(8×4)は、駆動輪全てに巻くとしたほうが良いのでは?
また、チェーンが2本しかなくて、やむを得ず後前軸か後後軸かどちらかだけに
巻く場合は、どちらでも良いとしたほうが良いのでは?
後前軸に巻くとした根拠は何ですか?
荷重です。トラックは基本前から荷物を積んでいきますよね。ですからほとんどの場合、後前軸までで多くの荷重がかかっていることがほとんどだと思います。
後後軸までびっちり均等に荷重がかかるというのも稀だと思いますし、それだったら後前軸が最適じゃないかと…。
また、安全かどうかでいえば、駆動輪すべてに巻いたほうがいいとは思います。
ただ、ぶっちゃけた話そこまでする必要ないと思いますね。
荷重を根拠とするならば、逆ではないですか?
後前軸の軸重が後後軸の軸重と比べて大きいときに、後前軸にだけにチェーンを装着すると
後後軸がよりスタックしやすくなって走行不能になる確率が上がります。
その場合は、インターアクスルデフをロック(デフロック)して脱出ということになります。
駆動輪全てに巻かなければ、巻いていないほうがスタックしやすいのは当然です。
さらに、インターアクスルデフの構造上、空転させるのは3軸目のほうが良いのでは。
http://www.isuzu.co.jp/inquiry/acar_mai8.html
駆動の動力割合が5:5の場合はそうだと思います。しかし、それはデフロックのスイッチを入れてる時だけですよね。通常走行時なら軸重やスピードで動力割合は常に変わってるみたいですから。
であるなら、荷重が最もかかっている後前軸にかけるのが最適ではないかと思った次第です。
ちなみにですが、ISUZUの公式サイトには4軸目とかかれていますが、FUSOの車両取扱説明書には「後前軸」に巻いてくださいとしっかりと書いてありますよ。
今回私が使用している車両はスーパーグレートですし、ツーデフの装着位置に関してはわざわざ注意書きを入れてますからね。
この書き方だと、両輪に巻いてなければ大した効果がないと受け取れますが、そんなことないですよ。よっぽどの豪雪地帯でない限り、どちらかだけで充分だと思います。また、豪雪地帯でトラックに乗るような方は、私よりも雪道での経験値が高いでしょうし、状況に応じた最適な手段をとれるはずです。
っていうか、わざわざこんなページにチェーンの巻き方なんか見に来ないですからね。そういった人は自分の経験を信じて行動をとるでしょうし、そもそもそういった熟練者に向けて書いてないので、正直「どちらに巻くのが正解か?」なんか議論ふっかけられても面倒だし答えは出ないですよ。
先ほどのISUZUとFUSOの事からわかるように、メーカーの見解ですら割れているんですから。
自分の好きなほうにつけたらいいじゃないですか。