運送会社やトラック運転手への転職を考えるにあたって、
一番気になるのが「事故」を起こした時どうなるかではないでしょうか?
負担割合や事例は、たくさんのサイトで紹介されてるかと思います。
簡潔に、トラックで事故を起こした場合について結論を言ってしまうと、
「入社した会社によってそれぞれ対応が違う」
これが答えになります。
ちなみにですが私の会社だと、
「物損被害額」の3割が運転手の自己負担となります。
つまり、求められる弁済は、
車両の物損だけで、人的なものについての弁済は会社からは、請求されません。
例えば交通事故を起こしてしまい、100万の被害がでたとします。
その内の30万円を弁済してくれということですね。
本来であれば毎月の給料に「無事故手当」というものがつくのですが、事故を起こした翌月からこの「無事故手当」というのが消えます(ちなみに月1万円)
つまり上記の例だと、30ヶ月にわたって月1万円ずつ弁済する計算になります。
ここでなぜ私の会社規定を紹介したかというと、ペナルティ金額の大小はありますが、似たような方式を採用している会社が多いから。(こういった規定や約款を作るのは弁護士や行政書士ですからね。どこも似たようなものです。)
そして今回は、
「トラック運転手」が起こす「事故」についての情報をまとめたいと思います。
トラック運転手の事故について
そもそもトラックの運転手に負担する義務があるのか?
まずここが気になりますよね。
「そもそも弁済する必要あるの?」
私も大きい事故こそしたことはありませんが、正直そこに関してはずっと気になっていました。
答えをいうと、
「運転手側にあきらかな過失(故意)がある場合は支払う義務があります」
まあこれってよく考えてみたら当たり前なんですよ。
運送会社が、
トラック運転手に対して一切の賠償責任を追及できないとなると、その気になれば運送会社は誰でも倒産に追い込むことができたりもしちゃいますよね。
だって事故をたくさん起こせばいいだけですから。
個人的な逆恨みとかも可能になってしまいます。
つまり片方に明らかに不利な条件があると、「悪さ」に利用されてしまったりする可能性も出てくるわけです。
だから、いくら業務といえど、運転手に一切の賠償責任がないというのは、少々現実的ではありませんね。
ここは働くうえでしっかりと覚えておきたいところです。
もし事故を起こしたら?会社に残りたいなら素直に弁済が一番
自分が今勤めている運送会社に不満がなく、なおかつこのまま働き続けたいと思っていて、あきらかに自分に過失がある事故なら、素直に弁済したほうがいいです。
「弁済だけは納得いかない」
「まだこの会社で働きたい」
わがままを言ったとしても、必ず事故などの面で被った被害は、
自分に「かたちを変えて」返ってくると思ったほうがいいです。
例えば、日々の業務で少しきついコースを回されたり、あきらかに大変な仕事を振られたりもするかもしれません。
ツケっていうのはだいたい回ってきます。忘れないようにしてください。
では、反対にあきらかに自分に過失がない事故で弁済を要求された場合。
これも会社に残りたいなら、余計な波風をたてるのはあまりお勧めしませんが、「はっきりとそれはおかしい」と言ってしまってもいいと思います。
誠意的な会社なら話は聞いてくれるはずです。
それでも自分が納得できないのであれば、いくところまでいくしかないですね。
続きは法廷になります。
会社を辞めるつもりで、もとより不満しかなかったのなら、そういう姿勢も悪くないかも。
ただ付け焼刃の知識で戦いに挑んでも、「論破」されるのがオチなので、
争うならしっかりと弁護士なりに相談したほうがよいでしょう。会社経営者はだいたいにして法律関係に詳しい人、あるいは弁護士などにツテがいるので。
事故を起こしてもペナルティがない会社はあるのか?
全ての運送会社を把握している訳ではないので、あくまで憶測になってしまうのですが、
「金銭的なペナルティナシの運送会社はない」
と思った方が良いです。
個人負担ナシをアピールしている会社でも、無事故手当のカットを個人負担としていませんし、ボーナスのカットも個人負担としていません。
これは業界の風習だと思って割り切った方がいいぞ!
あれこれ難しく考えるのは良くないわね。
運送会社における事故はなぜご法度なのか?
自動車保険を組んだことある人なら、なぜ運送会社だけ弁済になってしまうのって思わないですか?
だって保険入っていれば、事故を起こしたとしても、年間数万円程度、保険料上がるだけじゃないですか。
ではなぜか?
運送会社のトラックが入る保険は、「フリート契約」だからダメなんです。
フリート契約者とは…「所有・使用する自動車」のうち、ご契約期間が1年以上の自動車保険をご契約されている自動車の合計台数が10台以上であるご契約者をいいます。
引用 損保ジャパン
フリート契約というのは、一般の方に多くあるノンフリート契約のように、車両1台ごとに契約するのではなく、10台以上ある場合などに契約します。
割引率などは、ノンフリートよりも優遇されますが、
それはあくまで事故を起こさなかったらの話。
場合にもよりますが、事故を起こした被害金額よりも来期の保険料が上がることもあります。
なので、こういうことを防ぐためにも、自己弁済でどうにか済ませようとするんですね。
大手企業はそもそも保険に入ってない場合も
宅配大手各社は、自動車保険に入ってないと有名ですね。
あれだけ多くの車両を抱えていると、保険に入るより自己弁済したほうが安く済むのでしょう。
運送会社と運転手が裁判で争った時の事例
「支払い義務がある場合があるのはわかったけど、どれくらい負担するの?」
ぶっちゃけ気になるのはこれですよね。
実は過去に、トラック運転手である従業員が起こした事故で、運送会社側が訴訟し、それに対しての判決が出ています。
ちなみにこの事故は実際にあった話で、現実のお話です。
まず簡単にこの件のポイントをまとめると、
- 路面が凍結しスリップで運転手が事故を起こした
- 従業員はタイヤが摩耗していたのを知っていた
- 会社側がそれ(摩耗を知っていたこと)に非があると主張
- 従業員側がこちら”だけ”に非はないと主張
これに対しての判例です。
最高裁の判例では、「使用者がその事業の執行につきなされた労働者の加害行為により、直接損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、労働者に対し、右損害の賠償を請求することができるにとどまると解するべき(最一小判昭和51.7.8茨城石炭商事事件)」と判示されており、本件においても、この最高裁判例を引用して総合考慮した結果、Aさんは、損害額の5%(3万円弱)について負担すべきと判示しました。
引用 竹内社労士事務所
要約すると従業員側が損害額の5%だけ負担しなさいという判決(従業員側敗訴)が言い渡されました。
私は運送業に従事する身として、
「凍結でスリップし、事故が起きた」
このような事故は、よほどの特殊な状況ではない限り、運転者に非がある事故だと思いますし、ほとんどの運送会社の従業員の方も私と同じ意見の方が多いのではないでしょうか。
しかしながら法というのはいつの世も労働者側に手厚いもので、
いくら裁判で敗訴したとしても、実際に運転手がした負担は5%だけだったという事実です。
私の考えでは、事故は絶対にあってはならないことだと思いますが、
「事故ったら人生終わる…」
このように”不必要に悲観的”になる必要もないと思います。
事故を起こさないためには?とにかく車間距離をとれ
私は9年間事故をしていません。
その経験の上で、事故を起こさないために最も大事なこと。
それは車間距離。兎にも角にもこれが大事。
昨今の日本で起きる事故で最も多いのが追突なんですが、私の会社でもやっぱり追突が多い。
また,平成30年中の交通事故発生件数を事故類型別にみると, 追突(14万9,561件, 構成率34.7%)が最も多く,次いで出会い頭衝突(10万6,631件,構成率24.8%)が多くなっており,両者を合わせると全体の59.5%を占めている
言い訳をきくと、やれ不注意だの、前見てなかったとか言うんですけど、だいたい携帯触ってるんでしょうね。
でもこれだけ、携帯が人に近いアイテムになると、
「運転中は一切携帯触るな!」
とか言っても、もう無駄なんですよ。
唯一これができるのは、スマホを一切触らせない監視体制と、方針に従わせることができるほどの賃金を払える会社だけです。
だからこそ車間距離をとにかくあける。
ということなんですよね。
たまにTwitterを見てると運転手の方が、
「我々が車間距離を多めにとってるのは人に譲るためじゃなくて、止まれないからだ!」
「入ってこないで欲しい!」
って書いてる人いるんですけど、そんなこと言ってるうちは正直甘いです。
1、2台強引に割って入られても、大丈夫なくらい車間取ろうよって話ですね。
そしてあと一つ、事故を起こさないための対策法を紹介すると、
すべての動作をゆっくり行う。
右左折、バック、発進、車線変更もすべてゆっくり行いましょう。
例えば車線変更も「ゆっくり」やれば、サイドミラーや目視で見逃した車両に気付く時もあります。(目視しないのは論外です)
右左折も「ゆっくり」やれば、歩行者信号が点滅してる時に突撃してくる人にも気付くかもしれません。
ゆっくりとバックしていれば、万が一の被害が最小で済みます。
「ゆっくり、車間距離」
この標語を常に頭にいれておけば、事故をする確率はかなり減るので、忘れないようにしましょう。
事故るなら切腹するくらいの気持ちでハンドル握って欲しいよな!
その気持ちは大事よね。
まとめ
もし、今現状で転職を考えている段階で、私の中ではっきりと「トラック運転手に向かないから辞めたほうがいい」と言える基準があります。
それは、
「1年に1回以上事故を起こしている人」
です。
これは車両の大きさや、種類に関わらずです。
この記事でも少し触れましたが、事故を頻繁に起こす人が運転手をやると、会社にも、そこで働く自分も「双方の不利益」につながります。
ここで一つエピソードを紹介したいのですが、過去に、私の会社でとても勤勉な方がいました。
遅刻もないし、勤務態度も超がつくほどの真面目。
だけど、絶望的に運転が向いてない。
同乗期間中に危ないな危ないなと思っていたけど、もうかなりの期間教えていたのもあり、とりあえず一回だけ一人でやらせてみようと、ひとり立ちさせました。
その翌日に軽微な事故。
本人はもう絶対にしません。
この仕事は続けたいです。
という熱意に折れて、とりあえず続行。その翌月に事故。この時点でうちの会社はクビにしました。
そしてクビにしたときも、
「君は本当に運転に向いてない。もしこの会社以外で、また運転手として転職を考えているならやめたほうがいい。それが自分のタメだよ。」
ここまで上司は言い切りました。
その方と私が添乗している時に、非常に印象に残っていることがありまして、
「こういう市街地で車道走ってる自転車って怖いですよね~」
「どんな動きするかわかんないし、危なっかしいというか」
と言ったところ、彼はこう答えました。
ん?なにが怖いんですか?
たぶん「危機意識」というか、そういう感覚が人よりも少ないのでしょうね。
世の中には「やりたい」とか「性に合ってる」って理由だけでは、できない仕事もあります。
それはなにも働くにあたって敷居が高い仕事だけでなく、「トラックの運転手」という仕事にも、もちろんありますので、忘れないようにしたいですね。
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